「リボソーム」をざっくり解説

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凡例
本稿は農水省の獣医師国家試験出題要項(H26)に従ったもので,以下の範囲に該当します

Ⅰ 構造と機能 1.生体の基本構造と機能 A.細胞の構造と機能 c.細胞小器官

関連分野:組織学,生化学,細菌学,ウイルス学,薬理学

一部の頻出する文献については以下の略称を用います.

[CELL 2017]:ALBERTSJOHNSON,LEWIS,MORGAN,RAFF,ROBERTS,WALTER. 細胞の分子生物学. 第6版. 翻訳者: 中村桂子,松原謙一. ニュートンプレス, 2017.

[コア解組発 2012]:日本獣医解剖学会. 獣医学教育モデル・コア・カリキュラム準拠 獣医解剖・組織・発生学. 初版. 学窓社, 2012.

リボソームとは

リボソームはrRNA蛋白質によって構成されたmRNAの翻訳を担う顆粒状構造物である( [標準組織学 総論 2002] p.44).

リボソームには付着型と遊離型があり,更にポリソームがある

リボソームは構造的にはかなり単純でrRNAと蛋白質の複合体です.リボソームは更に細胞質内に遊離して存在している遊離型リボソームと,小胞体に結合している付着型リボソームに分けられます.

リボソームが付着している小胞体はザラザラしたようにみえるので,粗面小胞体と呼ばれます.そして,mRNA鎖に複数のリボソームが保持されている状態をポリソームといいます( [コア解組発 2012] p.278).

」の解説の「核膜の役割はDNA保護とスプライシングの保証」の部分でも述べましたが,蛋白質合成の流れは,①DNAから転写してhnRNA産生,②hnRNAにスプライシングなどを施してmRNAを産生,③mRNAが核膜孔を通って細胞質へ,④mRNAとリボソームが反応して翻訳(蛋白質合成) です.

では,遊離型リボソームと付着型リボソームが使い分けられることはあるのでしょうか? またポリソームはどの様な利点があるのでしょうか?

実際は, ④の初期では間違いなく遊離型リボソームが反応しています 

蛋白質は様々な用途で用いられ,細胞内で使用するためのものもあれば,細胞外へと吐き出して使うもの(=分泌蛋白質または細胞膜構成蛋白質)もあります.この細胞外へ吐き出す蛋白質をコードしているmRNAは特定のアミノ酸配列(=シグナルペプチド)を最初に指定しています.

 遊離型リボソームはこのシグナルペプチドを合成して少し経つと小胞体へと移動して,付着型リボソームになります ( [コア解組発 2012] p.278).

つまり,遊離型リボソームも付着型リボソームも動的にリボソームが動き回った結果の形態であって,決して ある特定のリボソームがずっと遊離型だったり付着型だったりするわけではありません 

また,ここから遊離型リボソームと付着型リボソームには本質的な違いがないということも分かります.

シグナルペプチド合成後の流れをもう少し詳しく見ていきましょう.遊離型リボソームが合成したシグナルペプチドは細胞質中に存在しているシグナル認識粒子(SRP)が認識します.シグナルペプチドとSRPが結合することで一旦リボソームの翻訳が停止します.その後,リボソームは小胞体に導かれ,SRPが離れ,翻訳が再開されます( [CELL 2017] pp.673-675).すなわち,SRPはリボソームを小胞体へと導く運び屋とも言え,分泌蛋白質や細胞膜構成蛋白質が小胞体にきちんと入るように保証している存在です.

なお,細胞内で使用する蛋白質にはミトコンドリアや核など一部の細胞小器官で使う蛋白質も含まれています.これらは最初から最後まで遊離型リボソームによって合成されます( [コア解組発 2012] p.278).

ポリソーム 一本のmRNAに多数のリボソームが結合した構造です ( [コア解組発 2012] p.278).これはつまり,複数のリボソームによって同時に単一の蛋白質が作られていることを意味しています.そもそもmRNA一本で蛋白質1つしか作れなかったら何度も何度も同じmRNAを作り直すはめになります.これは面倒ですし,生存戦略的には面倒なことをして余計なコストを支払ってしまった生物は著しく不利になります.ですからポリソームの採用は合理的と言えます.

リボソームの大きさは真核と原核で違う

リボソームの大きさは真核生物と原核生物で異なり,多くの多細胞生物は80Sリボソームを,細菌や古細菌そしてミトコンドリアは70Sリボソームを持っています.

これは「ミトコンドリア ミトコンドリアの生物学的由来は好気性細菌である」を参照してください.このリボソームサイズの違いは2つの意味で重要です.

まず,第1にミトコンドリアなどのリボソームが原核生物のものと同じであるということから細胞内共生説の論拠となります.

そして,第2に,こちらの方が獣医学的には重要ですが,原核生物のもつリボソームだけを認識して蛋白質合成を抑制できるような薬があれば,それは我々真核生物には影響を与えないのにも係わらず,原核生物だけにダメージを与えられます.つまり,抗菌剤が作れます.

実際,この機序で働く代表的抗菌剤としてクロラムフェニコールがあります.これは細菌のもつリボソームの50Sサブユニットを標的として蛋白質合成(=翻訳)を止めます.しかし,ミトコンドリアも50Sサブユニットを持っています.このミトコンドリアに対するダメージが副作用の原因となります.

なお,ほとんどのウイルスはリボソームを持ちません.しかし,例外的にアレナウイルス科に属するウイルスは宿主細胞由来のリボソームをもちます.

そもそも「アレナ」とはarenosus(砂状の)を語源とし,電子顕微鏡下に於いてリボソームが砂状に見えることから名付けられました.この分類に属するウイルスによる感染症としては,感染症法によって1類感染症に指定されているラッサ熱が最も有名かつ重要です( [獣医微生物学 2011] pp.245-246).

終わりに

以上が「リボソーム」の概要です.最低限,蛋白質を翻訳するということと抗菌剤の作用点として用いられているということは抑えておきましょう.

演習

リボソームについて,遊離型,付着型,ポリソームについてそれぞれ違いを明確にしつつ述べ,抗菌剤とリボソームの関連性を述べよ.

なお,国試には細胞小器官関係の問題の誤答選択肢で結構出てきます.実際のところ機能は蛋白質合成しかなく単純なので正答にしにくいのではないかと思います.ここでは触れませんでしたが, 薬理学の範囲では抗菌剤の作用機序で国試でも頻出です.

記事の情報

執筆: fur

入力・校閲: sayoko

更新履歴

初版:2019/02/27

参考文献

  1. ALBERTSJOHNSON,LEWIS,MORGAN,RAFF,ROBERTS,WALTER. 細胞の分子生物学. 第6版. 翻訳者: 中村桂子,松原謙一. ニュートンプレス, 2017.
  2. 見上彪. 獣医微生物学. 第3版. 文永堂出版, 2011.
  3. 藤田尚男,藤田恒夫. 標準組織学 総論. 第4版. 医学書院, 2002.
  4. 日本獣医解剖学会. 獣医学教育モデル・コア・カリキュラム準拠 獣医解剖・組織・発生学. 初版. 学窓社, 2012.

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